今日は、先日相談を受けた29歳のデザイナー、里奈さん(仮名)のお話から始めたいと思います。彼女の悩みは、きっと多くの方が「わかる!」と思えるものかもしれません。
がんばっても、なぜか自分の手柄にならない
「宗田さん、私、もう職場でがんばる意味がわからなくなってきました…」
里奈さんは大手広告代理店のデザイナーとして4年目。クライアントからの評価も高く、彼女のデザインセンスは社内でも一目置かれています。でも、ため息まじりに語る彼女の表情は曇っていました。
「どんなに頑張っても、いい評価をいただいても、最終的に”チームの成果”として報告されるんです。特に直属の上司の河田さんは、プレゼンの場でも『うちのチームが作りました』と言うだけで、具体的に誰がどう関わったかを伝えてくれません。」
確かに、チームワークは大切です。でも、個人の貢献が適切に認められないと、モチベーションが下がってしまうのは当然ですよね💭
「先月のプロジェクトでは、私が徹夜して仕上げたデザインが受注の決め手になったんです。でもミーティングでは『チーム全体の努力の成果です』で終わり。誰も私の名前を出してくれなかった…」
彼女の目には、悔しさと虚しさが浮かんでいました。
「かと思えば、締め切りに間に合わなかった時は『里奈さんの担当部分が遅れているから』と、はっきり名指しで責任を押し付けられるんです。それって、おかしくないですか?」
【💡行動ヒント:自分の貢献を記録として残しておく】
📎理由:後から「誰が何をしたか」があいまいになると、評価の根拠も曖昧になります。自分自身のために、プロジェクトでの具体的な貢献内容をメモしておくことで、適切なタイミングで自己アピールする材料になります。
“チームでやったこと”にされると、誰が損をする?
里奈さんのケースは、実は珍しくありません。「チーム」という言葉が盾になって、個人の努力や貢献が見えなくなる…これは多くの職場で起きている現象です。
特に日本の職場文化では「和」や「謙虚さ」が美徳とされることもあり、自分の功績を主張することに罪悪感を抱く方も少なくありません。でも、考えてみてください。この状況で最も損をするのは誰でしょうか?
「私だけじゃなくて、本当に協力してくれた同僚たちも損してると思うんです。みんなの役割があいまいになって…」
里奈さんの言葉には深い洞察がありました。確かに、”チーム”という言葉でぼかされることで損するのは:
- 実際に貢献した個人(評価やキャリアの機会を失う)
- チーム全体(誰がどんなスキルを持っているか不明確になる)
- 会社自体(人材の強みを活かせなくなる)
「河田さんは『謙虚に、チームプレイヤーとして』と言いますが、私には自分の手柄を独り占めしたくないだけのように見えます…😢」
この感覚、わかります。チームプレイの大切さは理解していても、それが個人の努力を無視する言い訳になっているなら、それは本当の意味でのチームワークではないのです。
【💡行動ヒント:同僚との相互承認を習慣づける】
📎理由:上司が適切に評価してくれない環境では、チーム内で「あのアイデア、良かったよ」「この部分、すごく助かった」といった相互承認の文化を育てることで、お互いの貢献を可視化できます。
名前も出ないのに、責任だけ押しつけられる理不尽
話を聞いていくうちに、里奈さんの状況にはもう一つのパターンがあることがわかりました。
「成功した時は『チームでやりました』なのに、何か問題があると『里奈さんの担当部分で』と突然個人名が出てくるんです。この非対称さが本当に疲れます…」
彼女の上司・河田さんの行動パターンは、典型的な「成功は自分のもの、失敗は部下のもの」という責任転嫁の姿勢です。これは単なるマネジメントスキルの不足ではなく、信頼関係を根本から損なう行為といえるでしょう。
「先週も、クライアントから修正依頼が来た時、『里奈さんが担当したところなので』と言われました。でも実際には河田さん自身が最後に確認して変更した部分だったんです…」
このような状況で傷つくのは:
- 自尊心(自分の価値を否定されたように感じる)
- チームへの信頼(連帯感が失われる)
- 仕事へのモチベーション(努力が報われない感覚)
特に繊細さを持つ人ほど、この種の不公平に敏感です。「気にしすぎ」と言われることもあるかもしれませんが、それは正当な感情です💭
【💡行動ヒント:事実ベースの会話を心がける】
📎理由:感情的にならず「このデザイン案は私が担当しましたが、最終確認は河田さんがされています」など、淡々と事実を述べることで、不当な責任転嫁を防ぐことができます。
“信頼できない人”を見分けるシンプルなサイン
里奈さんの上司のような行動パターンは、実は「信頼できない人」のサインでもあります。心理学的に見ると、こうした人には共通の特徴があります。
「河田さんって、他の人にも同じことしているんでしょうか…」
そう尋ねる里奈さんに、私はいくつかの「信頼できない上司」の特徴を伝えました:
- 成功と失敗で態度が180度変わる
成功時は「私たちの成果」、失敗時は「あなたのミス」と言う人は要注意です。 - 具体的な評価よりあいまいな言葉で済ませる
「よくやった」「チームの力」など、具体性のない評価は、実は評価していない可能性があります。 - 自分の非を認めず、他者に責任転嫁する
自分のミスを認められない人は、部下の功績も認められません。
里奈さんは頷きながら「全部当てはまります…」と小さな声で言いました。
「でも、こんな上司とずっと仕事するしかないんでしょうか?」
この問いには、単純な答えはありません。ただ、大切なのは自分自身の心の健康と、キャリアの長期的な展望です。
【💡行動ヒント:信頼できる味方を職場内外で見つける】
📎理由:すべての上司や同僚が信頼できるわけではありません。あなたの価値を正当に評価してくれる人を見つけることで、精神的な支えになり、キャリアの可能性も広がります。
静かに、自分の境界線を取り戻すために
「でも、いきなり転職するのも怖いし…」
里奈さんの不安は当然です。だからこそ、今の環境でできる小さな一歩から始めてみましょう。
「自分の境界線を取り戻す」ということは、大げさな反抗や対立ではなく、自分の価値を静かに主張し続けることです。
例えば:
- 自分の成果を可視化する
ポートフォリオをきちんと整理し、自分のスキルや貢献を客観的に示せるようにする - 適切な場で自己アピールする
「このデザインのコンセプトは私が提案しました」と、事実ベースで伝える習慣をつける - 信頼できる同僚との関係を深める
お互いの貢献を認め合える関係性を育てる
「私、ちょっと言ってみようと思います。次のプロジェクト報告の時に、『このパートは私が担当しました』って…」
里奈さんの決意に、私は心から応援の気持ちを伝えました。変化は一日では起きません。でも、小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな変化につながるのです。
そして、もし現在の環境で根本的な改善が見込めないなら、自分のスキルと価値を理解してくれる環境を探すことも、立派な自己防衛です。あなたの才能や努力が正当に評価される場所は、必ずあります💫
【💡行動ヒント:長期的なキャリアビジョンを持つ】
📎理由:今の職場だけが全てではありません。「3年後、5年後に私はどうなっていたいか」という視点を持つことで、現在の状況を客観的に評価し、必要な行動が見えてきます。
「チーム」という言葉は美しい響きを持っています。本来は互いを高め合い、支え合う関係性を表すはずです。しかし、個人の貢献をあいまいにし、責任だけを押し付ける盾に使われるとき、それは本当の意味でのチームワークではありません。
あなたの努力や才能が正当に評価されることは、わがままではなく、健全な職場環境の基本です。自分の価値を静かに、でもしっかりと主張していきましょう。
そして忘れないでください。あなたの貢献は、誰かの「チーム」という言葉で消えてなくなるものではないということを。
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