あの日の玄関先での口論を、あなたはどれくらい覚えていますか?
私は今でも、彼が怒鳴った時の声の調子や、その時に感じた胸の締め付けまでくっきりと覚えています。離婚して3年が経った今でも、ふとした瞬間にあの時の記憶が蘇ることがあります。
「これ、ゆうじに話したら怒るんだろうな」
今、私の隣にいるのは元夫のゆうじではなく、穏やかな性格の陽一さん。それなのに、なぜか私の頭の中では、まだあの頃の反応パターンが生きているんです。
つい先日も、友人からコンサートに誘われたとき。「行きたい!」が先に浮かんだはずなのに、すぐに次の思考が続きました。「でも、また『勝手に予定を入れるな』って怒られるかも…」💭
ハッとしました。陽一さんは一度もそんなことで私を責めたことはありません。それなのに、私の反応はまるで元夫といた頃のまま。
心理カウンセラーの友人に話したら、「それは心が自分を守ろうとしているんだよ」と教えてくれました。過去に傷ついた経験があると、同じ痛みを味わわないために「先回り」して身構えてしまうのだそう。
でも、この「先回り」の習慣が、今の関係にも影を落としていることに気づき始めています。
【💡行動ヒント:過去の記憶が蘇ったとき、「今」と「あの時」の状況の違いを意識的に書き出してみましょう 📎理由:記憶と現実を区別することで、感情的な反応が和らぐことがあります】
気づけばまた「先回り」してしまう私のクセ
「陽一さん、このケーキ、美味しそうだね」とカフェで言ったとき、私はすでに彼の反応を予測していました。
「そんなの食べたら太るよ」
「そんな甘いの好きなの?」
「値段の割に小さいね」
頭の中で勝手に彼のセリフを作り、反論の準備までしていた私。でも実際の陽一さんは、ただ穏やかに「食べてみる?分けようか」と言っただけでした。こういうことが、この半年だけでも何度あったでしょう。
気がつくと私は、言葉を発する前に「どう思われるだろう」「嫌われないだろうか」「怒らせないだろうか」と考えるクセがついていました。まるで地雷原を歩くように、一歩一歩慎重に会話を進める。それが当たり前になっていたんです😢
元夫との関係では、この「先回り」が必要だったのかもしれません。彼の機嫌を損ねないように、波風を立てないように。それは自分を守るための戦略でした。
でも今、私はもうその関係の中にいません。新しい関係の中で、古い防衛本能を持ち続ける必要があるのでしょうか?
先日、友人のめぐみが言いました。「玲子ちゃんって、まだ戦闘モードのままだよね」と。その言葉で初めて気づきました。私はまだ、過去の戦場から帰ってきていないのかもしれない。
【💡行動ヒント:「先回り」思考に気づいたら、その瞬間に深呼吸して「今は違う」と自分に言い聞かせましょう 📎理由:気づくことが変化の第一歩。自分のパターンを認識するだけでも反応が変わってきます】
“今の彼”を信じたいけれど、心が言うことをきかない
陽一さんと出会って1年。彼は優しくて、私の話をきちんと聞いてくれる人です。
「前の彼とは全然違うよ」と友人たちは言います。わかっています、頭ではわかっているんです。でも、心はなかなかそれについてこない。
先週末、陽一さんが急に「明日の予定、変えてもいい?仕事の付き合いができたから」と言ってきたとき、私の中で警報が鳴りました。かつての元夫なら、これは「お前なんかより仕事が大事だ」という宣言の始まりでした。
即座に冷たい表情になり、「いいよ、どうぞ。私なんかより大事なことなんでしょ」と言ってしまった私。陽一さんは困惑した表情で「そんなことないよ。ただ、どうしても断れない話で…せっかくの予定をごめん」と謝ってくれました。
その夜、なぜあんな反応をしてしまったのか考えました。頭では「陽一さんは違う」とわかっているのに、何かがトリガーになると、まるで条件反射のように過去の感情パターンが起動してしまうんです💭
心理学では「感情の転移」というそうです。過去の関係で感じた感情が、まったく新しい関係にも持ち込まれてしまう現象。
「でも、私は本当に陽一さんを信じられるのかな」という疑問も正直あります。一度裏切られた心は、なかなか簡単には開けません。それでも、この繰り返しの中で、少しずつ気づきが生まれています。
【💡行動ヒント:過去のパターンに陥りそうなとき、「これは過去の記憶からの反応かも」と一度立ち止まってみましょう 📎理由:感情と行動の間に小さな「間」を作ることで、選択の余地が生まれます】
それでも、ちょっと立ち止まってみた日のこと
先月、ある出来事がありました。
陽一さんからのメッセージが2時間返ってこなかったとき、私はまた不安の渦に飲み込まれそうになりました。「無視されている」「もう興味がない」「別の女性と会っているんじゃ」…次々と浮かぶ不安な想像。
でも、その日は違いました。深呼吸して、自分に問いかけてみたんです。
「本当にそうなの?それとも、また私の”先回り”かな?」
そして、いつもなら送るはずのメッセージ「忙しいなら言ってくれればいいのに」を送らずにいました。ただ待つことを選んだんです。
するとしばらくして、陽一さんから「ごめん、会議が長引いて。今から帰るよ。夕飯どうする?」という何気ないメッセージが。
その瞬間、小さな気づきがありました。私の不安は、現実ではなく過去の記憶から作り出されたものだったんだと😌
カウンセリングで学んだ「現実テスト」という方法を思い出しました。不安な想像が浮かんだとき、それが現実と一致しているかを確かめるという単純なこと。でも、この単純なことが、私の中の変化の始まりだったのかもしれません。
その夜、陽一さんと普通に夕食を食べながら、ふと思いました。「こうして平和な時間を過ごせることが、どれだけ素晴らしいことか」と。
小さな一歩かもしれませんが、自分の反応パターンに気づき、それを少し変えることができた瞬間でした。
【💡行動ヒント:不安な想像が浮かんだとき、「これは事実か、それとも私の解釈か」と区別してみましょう 📎理由:多くの場合、私たちの苦しみは「事実」よりも「解釈」から生まれています】
“安心して待つ”ことも、ひとつの愛のかたち
先日、陽一さんとの会話の中でこんな言葉が出ました。
「玲子さんが何か言いたそうにしているのに、言わないことがあるよね。もっと素直に言ってくれていいんだよ」
その言葉に、胸が熱くなりました。
これまで私の「先回り」は、相手を傷つけないため、関係を壊さないためのものだと思っていました。でも実は、それが新しい関係の深まりを妨げていたのかもしれません。
信頼関係とは、相手の反応を完璧に予測することではなく、たとえ予想外のことが起きても大丈夫だと思える安心感なのだと気づき始めています💭
心理学者のジョン・ボウルビィは、幼少期に形成される「アタッチメント(愛着)」が、大人の恋愛関係にも影響すると言っています。安全な愛着を持つ人は、パートナーを信頼し、不安を感じても自分を落ち着かせることができるそうです。
私の場合、元夫との関係が「安全な場所」ではなかったため、常に警戒モードになっていたのかもしれません。でも今、少しずつですが「安全」を感じられる場所を作っていけるかもしれないと思えています。
先回りせずに「待つ」ということ。それは単に受け身になることではなく、相手と自分、両方を信じる積極的な選択なのだと思います。
もちろん、すべての不安がすぐに消えるわけではありません。時々、古い反応パターンが顔を出すこともあるでしょう。でも、一歩ずつ、新しい地図を描いていきたいと思っています。
あなたも、もし似たような状況にいるなら、焦らなくていいんです。過去の傷を癒すのに、期限はありません。大切なのは、今この瞬間、自分に少しだけ優しくすること。そして、もしかしたら、今の関係は「先回り」しなくても大丈夫かもしれないと、小さな希望を持つことかもしれません。
【💡行動ヒント:自分の「先回り」が正しかったか間違っていたかの記録をつけてみましょう 📎理由:多くの場合、私たちの不安な予測は現実よりも悪い方向に偏っています。それを数字で確認することで、不安の正体が見えてきます】
過去の関係で身につけた防衛本能は、あなたを守るために必要だったもの。でも今、もし安全な場所にいるなら、少しずつその鎧を脱いでみませんか?そこには、もっと自由で軽やかな関係性が待っているかもしれません。
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