「SNS断ちをしたいのに、またスクロールしている自分がいる…」
「他の人の投稿を見るたび、なんだか落ち込んでしまう…」
こんな思いを抱えていませんか?
私のところに相談に来てくれたミホさん(仮名・32歳)も、まさにそんな悩みを抱えていました。明るく社交的な彼女ですが、最近はSNSを見るたびに心が疲れてしまうと言います。
今日は、情報過多の時代を生きる私たちが、どうやって自分の心を守っていけばいいのか、一緒に考えてみたいと思います。
やめたいのに、やめられない——その罪悪感の正体
「宗田さん、私、SNSをやめたいんです。でも、どうしてもやめられなくて…」
相談室に入ってきたミホさんは、少し俯き加減でそう切り出しました。
「朝起きてすぐ、寝る前、仕事の合間…気づいたらスマホを手に取って、スクロールしている。『もう見るのやめよう』と思っても、また開いてしまう。この悪循環から抜け出せません」
彼女の悩みは、現代を生きる多くの人が感じているものかもしれません。私自身も、「今日こそSNSは1時間だけ」と決めても、気づけば何時間も画面を眺めていることがあります。
「自分の意志の弱さが情けない」とミホさんは言いますが、実はこれは意志の問題だけではないんです。
スマホの通知や「いいね」の獲得は、脳内の報酬系を刺激します。新しい情報を得るたびに小さなドーパミンが分泌され、それが習慣化していくのです。つまり、私たちの脳は「見る」ことに快感を覚えるように設計されているのです 💭
「それに、見ないでいることへの不安もあるんです」とミホさんは続けます。「情報から取り残されるのが怖い。みんなが知っているのに、私だけ知らないなんて…」
この「取り残される恐怖(FOMO:Fear Of Missing Out)」も、やめられない大きな要因です。私たちは情報を持つことで安心を得ようとしますが、皮肉なことに情報が増えれば増えるほど、比較や不安も増えていきます。
【💡行動ヒント:まずは「通知オフ」から始めてみましょう📎理由:通知があるたびにドーパミンが分泌され、無意識にスマホを手に取る習慣が強化されます。通知をオフにすることで、「見る」という行動を自分の意志で選べるようになります】
「比べすぎて疲れる」のは、感性が豊かな証拠かもしれない
「友人の海外旅行の写真を見ると、『私はなんて狭い世界で生きているんだろう』と落ち込みます。誰かの美味しそうな食事の投稿を見ると、『私の食事はいつも同じで退屈だな』って。比べちゃうんです、ついつい」
ミホさんのこの言葉に、思わずうなずいてしまいました。SNSを開くと、そこには「選びぬかれた幸せの瞬間」があふれています。無意識のうちに、私たちは自分の「普通の日常」とその「特別な瞬間」を比較してしまうのです。
でも、ちょっと視点を変えてみましょう。他者の幸せを見て心が動くということは、感受性が豊かだという証でもあるのです 💡
「でも、羨ましい気持ちになる自分が嫌で…」
ミホさんはそう言いましたが、他人の幸せに心を動かせることは素敵なことです。ただ、問題はその比較が「いつも自分は足りない」という結論に向かってしまうことなのでしょう。
興味深いことに、研究によれば、SNSの使用時間が長い人ほど、自己肯定感が低下する傾向があるそうです。これは「上向き比較」と呼ばれる心理現象で、私たちは自分より恵まれていると感じる他者と自分を比べることで、自己評価を下げてしまうのです。
「実は、友人から『あなたのSNSの投稿を見て、私は何もできていないって落ち込んだ』と言われたことがあるんです。私はただ楽しかった瞬間を投稿しただけなのに…」
ミホさんのこの言葉に、私は「そうなんです!」と声を大にして言いたくなりました。実は、あなたが羨ましいと思っている相手も、また別の誰かを羨ましく思っているかもしれないのです。
【💡行動ヒント:SNSを見る時間を決めて、タイマーをセットしてみましょう📎理由:無制限に見続けると比較の時間も長くなります。15分などの短い時間を決めることで、必要な情報だけをチェックする習慣が身につきます】
“沈黙が不安”なのは、私だけじゃない
「スマホを置いて、何もしない時間があると、なんだか不安になるんです。静かな時間が怖いというか…」
ミホさんのこの告白に、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。常に情報を得ることで、自分自身と向き合う時間を避けているのかもしれません。
実は私も以前、電車に乗るとすぐにスマホを取り出していました。待ち時間、ちょっとした空き時間…すべてをスクロールで埋めていたのです。でも、ある時気づきました。自分の内側の声を聞く時間が、まったくなくなっていたことに 😢
「何も見ない・聞かない時間」は、現代社会では贅沢になりつつあります。常に何かを「インプット」し続けるのが当たり前になり、自分の気持ちや考えと向き合う「沈黙の時間」が失われているのです。
「確かに…自分が本当は何をしたいのか、何に興味があるのか、わからなくなっています」
ミホさんの言葉には共感せずにはいられませんでした。過剰な情報は、自分自身の声を聞こえなくします。他者の声や意見で頭がいっぱいになると、「私はどう感じているんだろう?」がわからなくなってしまうのです。
「最近、友人とカフェに行っても、会話が途切れるとすぐにスマホを見てしまって…それが申し訳なくて」
これも現代の共通課題かもしれません。少しの沈黙も耐えられず、すぐに情報で埋めようとする私たち。でも、沈黙の中にこそ、新しい気づきや創造性が生まれることがあるのです。
【💡行動ヒント:1日10分でいいので、何も見ない・聞かない時間を作ってみましょう📎理由:静かな時間は「自分の声」を取り戻すチャンス。最初は不安を感じるかもしれませんが、続けるうちに自分の本当の気持ちが見えてくることがあります】
「見ない選択」は、逃げじゃなく”自分の時間を守ること”
「でも、SNSを見なくなったら、世の中から逃げているような気がして…」
ミホさんのこの言葉に、私は少し考え込みました。確かに、現代社会では「常に接続されていること」が当たり前になっています。情報から切り離されることは、一種の「逃避」のように感じられるのかもしれません。
でも、本当にそうでしょうか?
「実は先週、スマホを家に忘れて出かけたんです。最初はすごく不安でしたが、気づいたら久しぶりに空をじっくり見上げていました。雲の形を眺めて、なんだかとても落ち着いたんです」
ミホさんの目が少し輝きました。そうなんです、「見ない」選択は、逃げではなく、自分自身と向き合う勇気なのかもしれません 💭
情報過多の時代だからこそ、「取捨選択する力」が重要になってきます。すべての情報を受け取ることは不可能です。だからこそ、「今の自分に必要な情報は何か」を選び取ることが大切なのです。
「私、実は先月から週末だけSNSを見ないようにしているんです。最初は不安でしたが、その時間で読みたかった本を読んだり、散歩したり…少しずつですが、自分の時間が戻ってきた気がします」
この小さな一歩を踏み出したミホさんの勇気に、私は心から拍手を送りたくなりました。「見ない」という選択は、単なる情報からの逃避ではなく、自分自身の時間と心を守る積極的な行動なのです。
メディア学者のマーシャル・マクルーハンは「メディアは人間の拡張である」と言いました。つまり、メディア(情報)は私たちの五感を拡張してくれる素晴らしいツールです。でも、ツールはあくまでツール。それに支配されるのではなく、自分の意志で使いこなすことが大切なのです。
【💡行動ヒント:「情報断食デー」を週に1日設けてみましょう📎理由:完全にSNSを断つのは難しくても、特定の曜日や時間帯を「見ない時間」として設定することで、バランスを取ることができます】
スマホの外にある「本当の気持ち」と再会するために
相談室でのセッションも終わりに近づいたころ、ミホさんは少し晴れやかな表情で言いました。
「SNSをやめられない自分を責めていましたが、今日のお話を聞いて、少し気持ちが楽になりました。少しずつ、自分のペースを取り戻していきたいです」
私たちの脳は新しい情報や刺激を求めるよう設計されています。だから、SNSや情報との付き合い方に悩むのは、ある意味とても自然なことなのです。大切なのは、自分を責めるのではなく、小さな一歩から自分のリズムを作っていくこと。
ミホさんとの会話を通して、私自身も改めて考えさせられました。情報との向き合い方は、一人ひとり違って当然です。「見ない」選択をしたからといって、世界から取り残されるわけではありません。むしろ、自分の内側にある本当の気持ちと再会するチャンスなのかもしれません。
スマホの画面の外には、もっと豊かな世界が広がっています。鳥のさえずり、風の音、友人との対面での会話、自分の呼吸…そういった「リアル」な感覚を取り戻すことで、私たちは本来の自分を思い出すことができるのではないでしょうか。
ミホさんが帰った後、私も少しだけスマホをサイレントモードにして、窓の外を眺めてみました。小さな選択ですが、それが自分を大切にする第一歩になるのだと思います。
あなたも今日から、「見る」ことも「見ない」ことも、自分の意志で選べる自由を少しずつ取り戻していってくださいね。それは決して逃げることではなく、自分自身との大切な約束なのですから。
【💡行動ヒント:就寝1時間前はスマホを別の部屋に置いてみましょう📎理由:ブルーライトによる睡眠への影響だけでなく、心を静める時間を作ることで、自分の内側の声に耳を傾けるチャンスになります】
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SNSと上手に付き合うヒントが少しでも見つかりましたか? 完璧を目指す必要はありません。時には「見る」ことを楽しみ、時には「見ない」ことを選ぶ。そのバランスが、これからの私たちに必要なスキルなのかもしれませんね。
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