こんにちは、宗田玲子です。最近、ブログに寄せられるご相談の中で特に多いのが、「家事や育児の不公平感」についてのお悩み。特に在宅時間が長い方が、自然と家庭内の仕事を引き受けがちになり、そのうち「頼ることすらできなくなっていく」という悪循環に陥るケースです。
今日は、そんな状況で苦しんでいるAさん(38歳・エンジニア)のお話を中心に、どうして「助けを求める力」が失われていくのか、そしてどうすれば少しずつ取り戻せるのかを一緒に考えていきたいと思います。
在宅時間が長い=家事担当?無言のプレッシャーに疲れて
「最初は自分から引き受けたことだったんです。でも、いつの間にか当たり前になってしまって…」
Aさんがリモートワークを始めたのは3年前。パートナーが出社する中、自宅で仕事をするようになり、自然と家事の担当範囲が広がっていきました。
「家にいるなら、洗濯や掃除をするのは当然だと思ったんです。でも、仕事の合間に家事をこなすのはとても大変で、気づいたら夜10時…それでも『家にいたんだから』という無言のプレッシャーを感じて、疲れていても頑張ってしまうんです」
この「家にいるから」という思い込みは、実はとても根深いもの。在宅勤務=家事の担当という等式が、誰も明確に言葉にしていないのに、いつの間にか”暗黙のルール”として定着してしまうのです。
「仕事中に洗濯機を回すくらいなら…」と思って始めたことが、いつしか「料理も掃除も、基本的に全部」という状態に。そして、それが続くうちに心身ともに疲弊していきます。
💭 「家事には終わりがないのに、なぜか自分だけが無限に対応できると思われている気がする」という言葉が、Aさんの口から漏れました。
【💡行動ヒント:まずは「在宅=家事担当」という思い込みを紙に書き出してみましょう 📎理由:頭の中にあるだけの「当たり前」を外に出すことで、その考えが絶対的なものではないと客観視できるようになります】
頼っただけなのに、なぜか”責めてる空気”になる
「パートナーに『今日は夕食作れないから、帰りに何か買ってきてくれない?』と頼むと、ため息をつかれたり、『忙しいのはこっちも同じなのに』という反応が返ってくるんです」
多くの方が経験するこの状況。助けを求めただけなのに、なぜか自分が「無理なお願いをしている人」になってしまう不思議な逆転現象です。
「最初は言葉にしていたんです。でも『また?』という反応を何度も受けると、だんだん頼むこと自体が申し訳なく感じてきて…今では『自分でやった方が早い』と思うようになりました」
このパターンを繰り返すうちに起きるのが、「頼ることをあきらめる」という現象。一時的にはその方が楽に感じるかもしれませんが、長期的には大きな代償を払うことになります。
実は、「頼れなくなる」のは単なる遠慮ではありません。心理学では「学習性無力感」と呼ばれる状態に近いもので、「どうせ頼っても変わらない」という諦めが内面化されていくのです。
😢 「最近は自分の体調が悪くても、言い出せなくなりました。『また言い訳して』と思われそうで…」というAさんの言葉に、心が痛みました。
【💡行動ヒント:頼みごとをしたときの相手の反応と、自分の感情をノートに記録してみましょう 📎理由:感情を言語化することで、「頼ることへの恐怖」が実際の状況より大きくなっていないかを確認できます】
家族はチーム。でも”自分だけ動く”状態に限界がくる
「パートナーは悪い人ではないんです。ただ、自分から気づくタイプではなくて…。私も最初は『言われなくてもわかってほしい』と思っていましたが、そんなことを期待しても仕方ないとわかってきました」
家族はチームのはずなのに、チームの中で一人だけが走り続けている状態。それは誰にとっても健全な状況ではありません。
ある日、Aさんは発熱で寝込んでしまいました。39度の熱があるのに、「家事が止まってしまう」という焦りから無理をして立ち上がろうとしたそうです。パートナーは仕事から帰ってきて、Aさんの様子を見て初めて「こんなに大変だったのか」と気づいたと言います。
「体調を崩して初めて、自分がどれだけ抱え込んでいたかに気づきました。でも、そんな極端な状況になる前に、なぜ助けを求められなかったんだろう…と思うと悲しくなります」
多くの場合、「自分だけが頑張る」状態は、相手の無関心だけでなく、自分自身の「完璧にこなさなければ」という思い込みや、「波風を立てたくない」という気持ちからも生まれています。
💭 「頑張れば頑張るほど、相手は『大丈夫なんだ』と思ってしまうんですよね…」というAさんの言葉には、多くの方が共感するのではないでしょうか。
【💡行動ヒント:「これ以上は無理」という自分のラインを明確にしておきましょう 📎理由:限界を知ることは弱さではなく、持続可能な関係を築くための自己理解です】
相談=対立じゃない。”助けてほしい”を言葉にする練習
「カウンセリングで『相談することと責めることは違う』と教えてもらったんです。それから少しずつですが、『助けてほしい』を言葉にする練習をしています」
Aさんが変化のきっかけとしたのは、「相談」と「非難」の違いを意識すること。「あなたは何もしてくれない」ではなく、「私は今、助けが必要だと感じている」という伝え方です。
「最初は緊張しました。でも『私、今週すごく仕事が忙しくて、夕食の準備が難しいんだ。どうしたらいいと思う?』と聞いてみたら、意外にもパートナーは『じゃあ、3日くらいは俺が買って帰るよ』と言ってくれたんです」
この変化は一朝一夕には起きません。しかし、「責めている」と受け取られがちな言い方から、「一緒に解決策を考えてほしい」という姿勢に変えることで、少しずつ会話の質が変わっていくことがあります。
大切なのは、「すべてを完璧にこなす自分」から「助けを求められる自分」へと、自己イメージを更新していくこと。それは決して簡単なプロセスではありませんが、小さな一歩から始めることができます。
😌 「今では『これはどう分担する?』と話し合えるようになってきました。まだ完璧じゃないけど、前より楽になった気がします」
【💡行動ヒント:「〜してくれない」ではなく「〜したい・〜が必要」という形で気持ちを伝える練習をしましょう 📎理由:問題提起ではなく解決志向の会話は、相手の防衛反応を減らし、協力を得やすくなります】
頼る力を取り戻すと、関係も少しずつラクになる
「最近、パートナーが『なんで今まで言ってくれなかったの?』と言うんです。私にとっては大きな一歩だったのに、相手からすると『なぜ黙っていたのか』が不思議だったみたい。でも、これも関係が変わる過程なんだと思っています」
頼ることを諦めていた状態から、少しずつ「助けを求める力」を取り戻していくプロセスは、決して直線的ではありません。時には後戻りすることもあれば、新たな誤解が生まれることもあります。
しかし、Aさんが教えてくれたように、小さな変化が積み重なることで、関係性は少しずつ変わっていくもの。その鍵となるのが、「我慢」ではなく「相談」という形でコミュニケーションを続けることです。
「完璧な分担を目指すのではなく、お互いが『これならできる』という範囲で協力し合えればいいんだと、最近やっと理解できました。自分の限界を認めることも、大事なんですね」
家事や育児の分担に悩む多くの方が直面するのは、単に「誰が何をするか」という問題ではなく、「助けを求める・頼る」という関係性の問題。パートナーだけでなく、時には友人や親族、外部サービスなど、様々なリソースを活用する視点も大切です。
💡 自分一人で抱え込まなくていい。そのシンプルな真実に気づくことが、関係を変える第一歩になるのかもしれません。
【💡行動ヒント:週に一度、家族での「分担会議」の時間を設けてみましょう 📎理由:定期的な話し合いの場があることで、問題が大きくなる前に調整できるようになります】
助けを求めることは、決して弱さの表れではありません。むしろ、関係を深め、お互いを尊重するための重要なスキルです。「完璧な自分」を演じ続けるより、「等身大の自分」でいることの方が、長い目で見れば関係を健全に保つことにつながります。
Aさんの「少しずつでも変わっていく関係」のように、あなたの中にある「頼る力」も、きっと少しずつ取り戻すことができるはずです。今日からでも、小さな一歩を踏み出してみませんか?
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